その土地の物語を編み直し
“いま”を生きる人々の糧とする

ここに、物語がある。

岩手県遠野市。
北上山地のわずかな盆地のなかに形成された、かつて湖だったとされるまち。日本民俗学の夜明けを告げた『遠野物語』はここで生まれました。

明治の終わり、遠野の人・佐々木喜善によって語られ柳田國男が感じたるままに書き記した119話の物語。座敷童子がいた家の敷地には今も生活の跡があり、村人が河童や山の神と遭遇したと場所には当時と同じ景色が残ります。

現世と異界、人と自然、人と人ならざるもの、生と死。物語に登場する場所を訪ねると、過去と現在の連続性の中で自分もまた様々な間に立つ一人であると感じられること。物語の一部にあるという感覚が得られることが、遠野のなんとも言えない不思議な魅力です。

遠野物語をはじめ、今もひっそりと続く土着的な信仰、祈りを体言する風習や郷土芸能、先人たちの知恵の結晶である食文化や手仕事、遠野の大地と人と自然が共に作用しあい形づくられた馬事文化や住宅のあり方など。目には見えないものも多いけれど確かにこのまちに残るものたちに、私たちは魅了されてきました。

ともすると古いものと捉えられがちなこうした地域の物語は、物質社会に慣れてしまった私たちにとっては逆に新鮮であり宝の山であるかのように鮮やかに目に映ったのです。

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ある冬の出会い。

『遠野物語』との運命的な出会い。それはある一人の方との出会いをなくしては語れません。to know の顧問であり、元NPO遠野物語研究所副所長・現遠野市史編纂委員会委員長の大橋進先生 (75) です。

2017年1月、地元の方から「『遠野物語』について活動するならまずはこの人」とご紹介いただいたのが始まりでした。待ち合わせのカフェで「こんにちはー!」と大きな声がしたかと思えば、本でパンパンになったカバンをどさっとテーブルに乗せ、挨拶も早々にキラキラと目を光らせながら『遠野物語』について講義をしてくださったのが、大橋先生でした。

『遠野物語』発刊の経緯、柳田國男が込めた想い、遠野の歴史などのお話を聞くうちに、物語の世界がたちまち眼前に現れ、自分たちもその世界の住人として、また物語の一員として生活していることの興奮を覚えました。

柳田國男が佐々木喜善から遠野の不思議な話を聞いたその日の夜に「遠野物語を書く」と興奮の裡に書き記したように、大橋先生と出会ったその日に私たちの新たな世界への扉が開かれました。 それ以来、毎月先生とお会いして地域文化のおもしろさや奥深さを教えてもらう中で、自分たち自身もまた、誰かにこの魅力を伝えたいと自然と思うようになりました。

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「知る」入り口をつくる。

物語の舞台をまわり、文献を読み、地域文化の発展に尽力されてきた方々に会い話を聞いてまわると、そこには確かな熱量がありました。

しかし、ふと遠野市の文化の活用や観光の状況を客観的にみると、その熱量が生かしきれていないと感じました。これではせっかくの魅力が伝わらない。どうしたらこの豊かな地域の物語を、現代を生きる人々へ接続できるのか。どうしたら私たちが感じた興奮を、伝えられて、おもしろいと思ってもらえるのか。自分にとって必要なものだと認識してもらるのか。そのためには、見せ方を変えて文脈をつくる必要があり、編集、企画、そしてデザインが大切だと考えました。

磨けば光るではなく、すでに光っている『遠野物語』の魅力を可視化する。
プロジェクトの名前 to know(トゥーノウ)は、”how to know = 知る方法” が由来ですが、豊かな地域文化を知るプロセスをつくることが私たちの使命です。

有難いことにデザイナー、アーティスト、イラストレーター、webディレクター、ダンサー、映像作家、商品開発のプロなど、これまで志ある多くの方々にご協力いただいてきました。今後も内と外をつなぐハブとなり、「知る」入り口をつくっていきます。

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人々の糧となる、新しい物語をつくる。

そして、知ってもらうその先にあるもの…
私たちが目指すゴールは、その土地の物語を”いま”を生きる人々の糧、活動の本源とすることです。

柳田國男は『遠野物語』に、明治維新によってかたちだけ西洋化する日本人へのメッセージを込めたと言われています。激動の新時代を生きる私たちにとっても、遠野に残る物語を紐解き、編み直す仕事を共に行っていくことが、私たち自身のルーツを知り、誇りを持ち、さらに明日を形づくっていく上での大きな糧となると信じています。

あらゆる境界が豊かに交じり合う新しい世界へ。
私たち to know は、ここ東北の奥地から、地域を、そして私たちを知る新たな方法を提案します。

− 願わくば、これを語りて平地人を戦慄せしめよ。 −

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団体名
to know
住所
岩手県遠野市中央通り10-1
URL
https://toknowjp.com
設立
2017年10月
実行内容
  1. 遠野に関するスタディツアーやイベントの企画・運営
  2. 遠野の資源を活用した商品の企画・製造・販売
  3. 遠野をモチーフにした舞台やコンサートなどのプロデュ―スと広報支援
  4. 遠野の文化や歴史を再定義する学術研究
  5. 子ども達とともに学ぶことで次世代に遠野をつなげる育成活動
  6. 上記1~5に関わるクリエイティブの開発
  7. 遠野地域での活動実績をベースにした講演やレクチャー、コンサルティング